蜂の巣倉庫とは

繭を最適な状態で貯蔵するために、蜂の巣倉庫には様々な工夫が施されていました。
蜂の巣倉庫にはどのような優れた点があったのか紐解いていきましょう。

繭を貯蔵するのに
最適な構造の「蜂の巣倉庫」

蜂の巣倉庫は、繭を貯蔵するための木造の倉庫です。昭和11年に福島県の製糸工場で建設され、昭和40年に熊谷工場に移築されました。倉庫内部には、繭を貯蔵する縦穴がいくつも並んだ珍しい構造で、まるで蜂の巣のように見えることから、蜂の巣倉庫と名づけられました。

製糸工場では、農家から運び込まれた生繭を最初に蒸気の熱で乾燥させます。後の工程でカビの発生や腐敗を防止するのが目的です。乾燥させた繭は、その性質を安定させるため温度・湿度が一定している繭倉庫に貯蔵します。

一般の倉庫では袋詰めされた繭を倉庫に積み重ねて貯蔵しますが、蜂の巣倉庫では袋詰めしない繭を天井から縦穴型の貯蔵庫に流し込んでいきます。袋詰めで貯蔵する倉庫に比べ、たくさんの繭を貯蔵することができるほか、いくつも優れた特長がありました。

優れたしくみは構造にあり!

何よりも蜂の巣倉庫の特長は、その構造にあります。貯蔵部が複数の穴で仕切られているので、入荷した季節やロットによって、繭を別々に保管できます。穴ごとに番号がついており、帳簿と連動させて管理できるようになっていました。

温度・湿度の安定性が高い

繭をそのまま貯蔵することで、温度・湿度の安定性が高くなり、繭の状態を良好に保つことができます。また、貯蔵空間が床面と接していない構造なので、ネズミや害虫などの被害をまぬがれやすいという利点もありました。

先入れ先出しで効率よく

通常の繭袋を入庫する倉庫では、先に入れた繭袋が奥に行ってしまいます。また、積んでしまうと下の袋の取り出しが難しくなります。蜂の巣倉庫は、上から入れた繭を下から取り出す仕組みのため「先入れ先出し」が可能になり、効率よく繭を次の工程に移すことができました。

蜂の巣倉庫の作業としくみ

倉入れ<図1~3>乾燥させた繭を入れた繭袋を、昇降機で2階に運び、2階床面の蜂の巣状の穴に、袋から出した繭を流し込みます。縦穴は作業する人が落ちないように、人の胴回りよりひとまわり小さいサイズになっています。

貯繭(ちょけん)<図4>乾燥させてすぐの繭は含まれる水分量が一定でなく、繭質が不安定です。繭の状態や季節によって変わりますが、概ね1か月は倉庫に貯蔵し、繭質の安定を待って次の工程に移ります。

図4 縦穴を下から見た図

倉出し<図5~7>1階の天井に取り出し口があり、上の紐を引くことで、繭が落ちてくる仕組みです。繭袋を下にセットし、取り出し口の蓋をあけ、繭を流し込みます。

通常、繭袋1袋には15キロの繭が入れられます。秤で計量し、麻縄で袋の口をしばります。袋詰めされた繭袋は選繭場へ運ばれます。
蜂の巣倉庫では、ひとつの穴に繭袋80本分、1,200キロの繭を貯蔵することが可能でした。蜂の巣状の穴は105個あるので、全体で8,400本、約126,000キロの繭が貯蔵できるようになっています。

繭は季節的な産物なので、繭の入荷は春から秋にかけて、5月から9月までの短期間に集中します。しかも、蚕は繭になって約12日ほどで羽化して成虫になるため、手早く繭を乾燥させ、休みなく作業を続けて倉入れしなければなりません。
倉に貯蔵された繭は、毎日使う分だけ繭袋に詰められ、工場へ倉出しされていました。熊谷工場の最盛期は1日220本、約3,300キロの繭を繰糸していたので、倉出しも大変な作業でした。オンシーズンにはどこもかしこも繭であふれ、2交替で24時間ずっと作業が続き、休む間がない忙しさだったと、語り継がれています。

養蚕の道具も展示されている
貴重な文化遺産!

現在、蜂の巣倉庫の1階には「埼玉県所蔵蚕糸関係歴史資料」として、養蚕農家で使われていた今では珍しい木製の機械などが展示されており、養蚕に使う道具や作業内容についても学ぶことができます。当時の養蚕農家では「子どもを育てるより蚕を育てる方が難しい」と言われていたほど、蚕は大切に育てられていたそうです。そして、さらに手間暇かけて、世界に誇れる美しいシルクがつくられていました。蜂の巣倉庫は、日本の近代化を支えてきた製糸業の繁栄を偲ばせる貴重な文化遺産です。

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