シルクの基礎知識シルクについて

シルクは肌にやさしく綿よりも優れた吸放湿性など、他の繊維にはない特有の機能性を持っています。シルクをさらに知ることで私たちの生活にかかせない新しい生活素材であることがわかります。

装いだけじゃない、美と健康に優れた効果を持つシルクの魅力

美しく装うだけではなく、身体を守る健康素材

シルク(絹)は古くから、ドレスや着物などフォーマルウェアの分野を中心に、最高の衣料素材としてクレオパトラから卑弥呼まで、世界中の人々を魅了し、愛用されてきました。優雅な光沢やしなやかな肌ざわりに加え、豊かな吸放湿性、保温性などに基づく着心地のよさがあり、他の繊維の追従を許さない固有の特性がシルクの魅力です。さらに、近年の科学技術の進歩により、絹タンパク質の機能の解明が進み、美容や健康にもよいことが明らかにされてきました。

シルクが身体にやさしい理由~シルクはアミノ酸を含んだタンパク質繊維~

お肌の成分に近い約20種のアミノ酸を含む「タンパク質繊維」

シルクは、蚕(カイコ)の繭から作られるタンパク質でできた天然繊維です。アラニン・グリシン・チロシンなどの、お肌の成分に近い約20種のアミノ酸が数百~数千も結合した純粋なタンパク質繊維で、繊維素材としてだけではなく、ひとの皮膚や健康にもよい多くの機能を持ち合わせています。

シルク糸のいろいろな種類

生糸(きいと)とは

繭を熱湯または弱アルカリ液で処理し、接着を緩めて糸を引き出し、その何本かをより合わせて1本の糸にしたものが「生糸」で、この工程を繰糸(そうし)といいます。生糸は、シルクの主体である「フィブロイン」と「セリシン」からなり、繭の糸はフィブロインの周りをおおっているセリシンによって軽く接着しています。天然繊維の中で唯一の「フィラメント繊維(長繊維)」として、フォーマルからカジュアルまで幅広い用途に利用されています。

玉糸(たまいと)とは

蚕は、普通1頭で1個の繭を作りますが、2頭以上で1個の大きな繭を作ることがあり、これを玉繭(たままゆ)と呼びます。玉繭から糸をつむぐと、しばしば糸がもつれたまま出てくるため、節の多い生糸となり、「玉糸」と呼んで生糸と区別しています。織物ではこの節が独特の外観や風合いをかもし出し、シャンタン織やリンシャン織などのほか、紬織物などの原糸に利用されています。
※蚕は「匹」ではなく、動物と同じ「頭」で数えます。

真綿(まわた)と紬糸(つむぎいと)とは

玉繭や蚕蛾・害虫などで穴をあけられた繭や、病蚕で汚れた繭など、生糸にするのに適さない繭をアルカリ液で処理してセリシンを除き、綿状にしてから平に引き伸ばしたものを「真綿」といいます。
真綿はそのまま防寒衣料の中綿や布団綿などに利用されています。この綿から糸を引き出し、指でより合わせてつむいだものが「紬糸」です。この糸は膨らみがあり丈夫で暖かく、結城紬など紬織物の原糸となります。

絹紡糸(けんぼうし)とは

繰糸に適さない繭や繰糸工程で出てきた屑糸などをアルカリ液で処理して綿状にしてから、適当な長さに切断して短繊維とし、紡績した糸が「絹紡糸」で「スパンシルク」とも呼ばれます。古くから単独または生糸や玉糸と混ぜて、和服の普段着や風呂敷に使用されてきましたが、近年では他の繊維と混ぜて洋服や肌着生地にも使用されています。

シルクの特性

光沢と色彩

シルクの光沢は、よく真珠にたとえられます。真珠は、波長によって表面で反射するものと、内部まで透過してから各層で反射するものが干渉して、気品のある光沢を生みだします。シルクの光沢も、蚕が繊維をつくりだす過程でできるフィブロインタンパクの層状構造や内部の複雑な構造が生みだしています。また、シルク(フィブロイン)の大小さまざまな三角の断面によるプリズム効果が絹の光沢をいっそう美しいものとしています。
シルクの美しさは、染め上がりの美しさにもあり、いろいろな染料に美しく染まり、繊細な図柄を鮮やかに染め分けることができます。

引っ張り強さ

シルクは、細い糸が織りなす薄い生地が多いことから弱いように思われますが、引っ張り強さは羊毛や綿よりも大きく、繊維の中では強靭な部類になります。

吸湿性・通気性・保温性

人体からは1日ほぼ1リットルの水分が発散されています。衣服には、この水分を吸収して外に放出する通気性が着用時の快適さに関係します。天然繊維の中でも、シルクは綿の1.3~1.5倍の吸水性があり、放湿性も綿に遜色ない特徴をもっています。
また、シルクは、天然素材の中でも最も細く長いため、繊維と繊維の間にたくさんの空気を含むことが出来ます。すきまの空気の断熱効果により、外の寒さを伝えにくく、軽やかで、薄くても暖かみがあります。
シルクは吸湿性が優れていて放湿速度が大きく、さらに保温性に優れた繊維で、「冬は暖かく、夏は涼しい」快適な天然のエアコン素材です。

静電気

冬になると衣類の着脱時にパチパチと静電気による不快感を味わうことがあります。繊維が摩擦すると静電気が発生し、繊維の電気抵抗が大きいと蓄積されて帯電します。シルクは吸湿性に富んでおり合成繊維に比べ静電気はおきにくくなります。ただし、著しく乾燥した場合はシルクにおいても静電気は避けられません。

紫外線(UV)カット

シルクは繭の中の蚕が紫外線を浴びないように守る機能があります。
シルク製品を身につけた場合、お肌の大敵といわれるUV-B波(UVB)、UV-C波(UVC)が吸収されて紫外線をカットします。シルクの紫外線カット率は90%前後と、極めて高い数値が報告されており、衣類だけではなく、美容・健康・医療分野からも注目を浴びています。

ウェアだけじゃない。
シルク製品の可能性は無限大

着物やドレスとしてフォーマルな場面を彩ってきたシルクですが、最近ではシャツ、ブラウス、セーター・カーディガン、パンツ、Tシャツなど、カジュアルな素材としても人気があります。また、その機能性(吸湿性・通気性・帯電性)が注目され、ストッキング、インナー(下着)、寝装品、インテリア用品など、幅広い用途に利用されてきました。

さらに、有効成分を粉末に加工したシルクパウダーを使い、コレステロール低下作用や認知症予防効果を利用した健康食品、保湿や紫外線カット機能を利用した化粧品など、さまざまな商品が開発されています。

シルクのいろは

参考文献:シルク手引書 大日本蚕糸会